(11)耐薬品性

 耐薬品性の評価基準として、材料の劣化、相変化が一般的に考えれられている。「材料の劣化」による物性変化は、種々の測定により定量的に把握することができる。
 この変化は、機械的物性変化に最も顕著に見られる。これに伴って材料表面にクラックが発生したり、小さなひび割れ(crazing)が見られる。これらの現象は成形品の残留応力との関連があるとされている。外観的変化としては、極性基の生成に伴う着色もしばしば見られる。
 一方、「相変化」による物性変化は、化学薬品による膨潤、溶解である。このとき影響する因子は、架橋ポリエチレン材料と対象となる化学薬品との溶解度パラメーターSP値差である。この値が大きく離れていることが膨潤や溶解が起こらないことの第1の要件である。しかし、架橋ポリエチレンのようにポリマーが結晶性を示すときは、適用できないことや溶剤が水素結合を示したり、極性基を持っていたりすることにより大きく影響されるので、前記条件が満足されたとしてもポリマーが膨潤したり、溶解したりすることを予想することは困難である。
 従って、ポリマーの評価は、実際の各種化学薬品に対し、個別に行なう必要がある。表3.9に架橋ポリエチレンの耐薬品性の結果を示す。
 測定方法は、呼び径16の架橋ポリエチレン管をType 6Aダンベルを用いて打抜き、試験サンプルを得た。この架橋ポリエチレンのゲル分率は69%である。
 内径35mmの試験管に100〜150ccの試薬を入れて、これを恒温槽に固定し、一定温度になってからサンプルを投入。温度1水準に対し、3本のサンプルを用いた。約96時間浸漬後、取り出し、引っ張り試験(引っ張り速度20mm/min)を行ないブランクと比較してその変化を調べたもの。
 またこれに関連してビニルテープ等粘着テープは、基材に含まれる可塑材が架橋ポリエチレン管の性能に悪影響を及ぼす恐れがあるため、使用してはならない。施工の都合上やむを得ず使用した場合は、配管終了後速やかに取り除いておくこと。


表3.9 架橋ポリエチレンの耐化学薬品性
↓薬品名      温度→ 25℃ 50℃ 75℃
水道水
海水
河川水(横浜市内)
30%塩酸
10%硝酸
20%硫酸
20%酢酸
20%クロム酸
20%カセイソーダ
10%アンモニア水
50%ホルマリン
エチレングリコール
酢酸エチル
50%フェノール
メチルエチルケトン
シクロヘキサン
エタノール
ベンゼン
四塩化炭素
トリクロルベンゼン
ガソリン
JIS 2号絶縁油
ASTM 2号油
A重油
C-マシン油
(1)評価基準 ○: 引張強さ、破断伸び保持率とも90%以上
△: 引張強さ、破断伸び保持率とも70%以上
−: 試験液の蒸発で試験不能
(2)試験条件 浸漬時間 96時間
試験片形状 Type 6Aダンベル
サンプル数 3
引張速度 20mm/min
試験温度 常温


(12)耐塩素水性

 水道水の殺菌処理として投入される塩素ガスに対する耐久性が配管材の場合大きな問題とされている。世界的に著名な試験機関であるボディコート社(スウェーデン)が架橋ポリエチレン管の塩素水性に関して、密閉系の回路で連続通水試験を実施している。
 この結果に基づいて、ボディコート社が架橋ポリエチレン管の破壊時間を推定したのが図3.11である。

[例] 密閉系回路で水道水を75℃に加熱し、圧力0.3MPa、塩素水濃度0.3ppm(一般的な
家庭で使用している水道水の塩素濃度は0.1〜0.3ppmといわれている)で使用した
場合、架橋ポリエチレン管(呼び径13、外径17mmφ、厚み2mm)が破壊するまでの
時間の目安を0.3ppmの図3.11から推定してみる。

計算式
    ■■ P: 圧力(MPa)
σ: 円周応力(MPa)
D: 平均外径(mm)
e: 最小厚さ(mm)

上記の計算式から、σは1.125MPaになり、図3.11の円周応力1.125と
75℃の交差する破壊時間は約48万時間となり、年数に換算すると
480,000時間÷8,760時間/年=54.79年となり、少なく見積もって
約55年と推定される。

図3.11 架橋ポリエチレン管の破壊時間の推定(ボディコート社試験)