(9)熱膨張及び熱応力

 架橋ポリエチレンの線膨張係数と縦弾性係数の代表値を表3.7に示す。

表3.7 架橋ポリエチレン管の線膨張係数と縦弾性係数
項 目 適用温度 単位 代表値
線膨張係数 20℃ 1/℃ 1.4×10-4
100℃ 1/℃ 2.0×10-4
縦弾性係数 20℃ N/mm2
{kgf/cm2}
588
{6,000}
80℃ N/mm2
{kgf/cm2}
147
{1,500}

 架橋ポリエチレン管の熱膨張率は、銅管や鋼管等に比べると10〜20倍と大きいため、給湯や温水配管の場合は事前に気配りが大切である。
 常温で配管したものに温水を通すと、顕著な蛇行が現れたり、逆に冷水が通ると強く張った状態になる。露出配管を行なう場合は通湯による撓みについて、あらかじめ関係者の了解を得ておく方が無難である。
 給湯管の場合、配管10m当たりの膨張量は100mm前後にもなり、さや管工法の立ち上げ部を露出させたりあるいは剛性の小さな保温材で被覆したままではこの部分膨張による撓みが集中し、条件によっては管が急激に曲がり、管路を狭めることがある。そのため、さや管出口で管を固定したり、立ち上がり部も十分な剛性のある被覆を行なう等の処置によって膨張をさや管内に分散させ、抑え込むことが必要である。
 熱応力に関しては、前述のように熱膨張が大きいにもかかわらず弾性係数が金属管と比べ、1/200〜1/1000と小さいため、熱応力は比較的小さく、実用上問題となることはない。また、膨張を分散させるのも小さな力で済み、特に難しいことではない。
 架橋ポリエチレン管は、他のプラスチックと同様に線膨張係数が実用温度範囲でも温度によって、また弾性係数は温度、変形量(歪み量)及び変形速度によってもかなり変動し、金属の場合と異なり、熱応力を厳密に計算で求めることが困難であるが、参考までに概略計算の一例を示す。

(例) さや管に納められた述べ長さ10mの呼び径13パイプ(水道用架橋ポリエチレン管の
M種または架橋ポリエチレン管PN15のM種)の場合

■■■ 20℃にて工事を行い、80℃の通湯をしたときの熱膨張量
ΔL=L・a・Δt=96 (mm)
ただし、 a: 20〜80℃の平均線膨張係数 1.6×10-4 (1/℃)
L: パイプの長さ 10,000mm
Δt: 温度差60 (℃)
 
■■■ パイプの両端を固定し、さや管には蛇行を生じるような隙間がないと
みなしたときの発生熱応力
σt=E・ε=1.41N/mm2 {14.4kgf/cm2}
ただし、 E: 80℃における縦弾性係数 147.1N/mm2 {1500kgf/cm2}
ε: 歪み量
ε=ΔL/L=0.0096
パイプを固定する器具に働く荷重
W=σt・A=138.2N {14.1kgf}
ただし、 A: パイプ管肉部の断面積 0.98cm2

 なお、実際のさや管では、通管がしやすいようにさや管内壁とパイプの間に隙間があり、パイプ両端部を固定されるとさや管内で蛇行するため、実際に固定器具に働く荷重は上記の値よりもかなり減少する(配管の状況によって値は異なる)。
 また引張弾性係数の温度と変形量の関係の概念を参考までに図3.10に示す。

図3.10 引張弾性係数と温度、歪み、引張速度の関係線図


(10)衛生性

 JIS K6769及びJIS K6787では、浸出試験により管の衛生性について規定している。ところが、ここで対象となる架橋ポリエチレン管は飲料用の常温水も通過させるので少なくとも食品用器具や容器に用いられるプラスチックと同レベルの衛生基準に適合しなければならない。従って、管材料から飲料中の有害物質の溶出については、特別の配慮を必要とし、材料試験と溶出試験の両面から安全性が保証されなければならない。
 プラスチックについてのこの種の要件を満たす基準として、厚生省告示の食品衛生法規があり、ポリエチレン材料に関係する告示は、昭和57年2月16日の厚生省告示20号がある。
 架橋ポリエチレン管は、表3.8に示したように、いずれの基準も満足するものである。


表3.8 架橋ポリエチレン管の衛生性試験結果
規格・法規 性能項目   性能の規格 測定結果
JIS K6769
(試験温度は
95℃とする)
浸出性 濁度 0.5度以下 0.5度以下
色度 1度以下 1度以下
全有機炭素(TOC) 5mg/L以下 5mg/L以下
残留塩素の減量 1mg/L以下 1mg/L以下
臭気 異常がないこと 異常なし
異常がないこと 異常なし
JIS K6768
(試験温度は
常温とする)
浸出性 濁度 0.5度以下 0.5度以下
色度 1度以下 1度以下
全有機炭素(TOC) 5mg/L以下 5mg/L以下
残留塩素の減量 0.7mg/L以下 0.7mg/L以下
臭気 異常がないこと 異常なし
異常がないこと 異常なし
食品衛生法規 1.材料試験 カドミウム及び鉛 100ppm以下 いずれも
100ppm以下
2.浸出試験
(60℃にて試験)
重金属 1ppm以下 1ppm以下
全有機炭素(TOC) 10ppm以下 10ppm以下
蒸発残留物
(個別規格)
30ppm以下 30ppm以下
4%酢酸 30ppm以下 30ppm以下
20%アルコール 30ppm以下 30ppm以下
n-ヘプタン※ 150ppm以下 150ppm以下
※25℃、1hの試験条件