第3章 架橋ポリエチレン管の性能

(1)基本物性

表3.1 基本物性
項  目 単 位 試験方法 物性値
密  度 g/cm3 JIS K6760 0.93以上
引張降伏強さ 23℃ MPa
(kgf/cm2
JIS K6769による 16.0以上
(163以上)
80℃ MPa
(kgf/cm2
5.9以上
(60以上)
引張破断時伸び 23℃ 300〜600
80℃ 300〜700
引張弾性率 20℃ MPa
(kgf/cm2
392〜588
(4,000〜6,000)
80℃ MPa
(kgf/cm2
137〜157
(1,400〜1,600)
衝撃強さ N・cm/cm2 ASTM D256 シャルピー 割れず
硬  度   ASTM D2240 ショアー 60〜70
熱伝導率 W/m・K
(kcal/hm℃)
ASTM C177 0.35〜0.47
(0.3〜0.4)
線膨張係数 10-4/℃ ASTM D696 1.4〜2.3
軟化温度 JIS K7206 ビカット 118〜133
融  点   流動せず
脆化温度 JIS K6760 -70℃
注:( )内は従来単位による値をあらわす。

(2)クリープ性能

 プラスチックに一定の荷重を加えて放置しておくと、変形が時間とともに増加してゆく。このような現象をクリープというが、プラスチック管の実用的強度をあらわす最も重要な指標がクリープ線図によって示されるクリープ性能である。
 クリープ線図は、プラスチック管の寿命と強度の基準を決定するのに広く利用されている。

@架橋ポリエチレン管のクリープ性能

 架橋ポリエチレン管の代表的なクリープ線図を図3.1に示す。
 架橋ポリエチレン管の大きな特徴は、この図に見られるように実使用温度の95℃以下では長時間にわたり屈曲点の発生が見られないことであり、他の配管材用プラスチックと際立って異なるところである。この特性については、海外の文献や規格の基準データ(1)においても認められ、よく知られている。

図3.1 架橋ポリエチレン管の代表的クリープ線図

 クリープ線図に屈曲点がある場合は、その屈曲が始まる時間をもってその寿命と見るのが一般的であるが、架橋ポリエチレン管は配管材として通常期待される寿命を十分満たしていることを示している。

Aクリープ線図と管の寿命との関連

 一般にプラスチックでは、クリープ現象が実用的な使用条件下でもかなり顕著に認められ、この点が通常の金属と異なるところである。即ち、使用中の圧力によって変形が時間とともに増加し、材料破壊に至るため、設計に際してはこれを配慮する必要がある。
 前記のクリープ線図は、配管材が実際に使用される状況に則したもので、認定した温度において、内圧によって生じる円周応力(hoop stress)とその応力により管が破損するまでの時間の関係を示している。即ち、設定温度と寿命時間に対して経年変化を考慮した破壊応力を示すものである。なお、縦軸の円周応力値は初期(クリープ進行前)の管寸法より算出したものである。
 この線図の意味を図3.2に示すような一般的なプラスチック管の例によって説明する。
 線ABが緩やかな右下がりとなっているのは、クリープによる寸法変化、この場合は径が拡大し、肉厚が減少するため、仮に破損を生じさせる応力が一定であるとしても、時間の経過につれてその管が耐えられる内圧が徐々に低下することを示している。また、この過程での管の破損形態を見ると延性破壊であり、単に管材の強度以上の応力がこの時点で負荷したことを物語っている。
 急勾配である線CDは、この区間では管材の強度が急激に低下することを示している。この段階で破損した管を普通のポリエチレン等の例で見ると、脆性破壊の様相を示し、明らかに質的変化即ち劣化の発生が認められる。また、経験的には耐衝撃性が著しく低下していることが知られている。
 曲線部BCは延性破壊と脆性破壊の混在域である。
 このように、クリープ線図は、それぞれの使用温度で、内圧によって破損を生じる応力と時間の関係を示すのみでなく、劣化が始まる時間を明らかにするものである。
 プラスチック管材の寿命は、脆性破壊が始まる時間以前に設定し、設計に用いる応力の基準値は寿命時間における破壊応力に基づいて決定するのが合理的である。この考え方は、既に各国の規格(1)(2)に明示されており、JXPA架橋ポリエチレン管でも採用することとした。

注(1) DIN 16893 ROHRE AUS VERNETZTEN POLYETHYLEN (VPE) -MESSE
(2) ASTM F877-84 CROSSLINKED POLYETHYLEN (PEX) PLASTIC HOT-AND
COLD-WATER DISTRIBUTION SYSTEM
図3.2 プラスチック管のクリープ線図一般概念図