第1章 架橋ポリエチレン管とは

(1)架橋ポリエチレンの特徴

 架橋ポリエチレン管とは、熱可塑性プラスチックとしての鎖状構造ポリエチレンの分子どうしのところどころを結合させ、立体の網目構造にした超高分子量ポリエチレンをいう。従って、架橋反応が終了した時点で、ポリエチレンはあたかも熱硬化性樹脂のような立体網目構造となり、耐熱性、クリープ性能とも向上する。
 すなわち、モデル的にあらわすと、図1.1のようになる。

図1.1 分子構造の比較

 架橋により向上する性能は次のとおり。

原料ポリエチレンの有する長所 架橋により付加向上する性能
・軽い
・柔軟性がある
・耐食性に優れる
・耐衝撃性に優れる
・低温特性に優れる
・電気特性に優れる
 (電気腐食を受けない)
  ・耐環境応力き裂性能が向上する
・クリープ性能が向上する
・耐薬品性が向上する
・耐熱老化性が向上する。


(2)架橋ポリエチレンとゲル分率との関係

@ゲル分率とは

 架橋ポリエチレン管の架橋程度は、一般に”ゲル分率”であらわす。
 架橋ポリエチレン等のプラスチックを特定の溶剤で溶かしたときに、溶かされずに残存している部分をゲル(架橋部分はゲルとして残る)とし、このゲル部分の重量と溶剤で溶かす前の重量との比(百分率)を”ゲル分率”という。

A架橋ポリエチレン管の性能とゲル分率との関係

 ポリエチレンを架橋させると、分子量が飛躍的に増大するので、
(イ)溶融、変形が起こりにくい
(ロ)長期性能が大幅に向上する
等、パイプ性能の向上が著しい。
 架橋の効果を定量的に表現する方法に、環境応力き裂試験があるが、その方法を以下に説明する。
 管の環境応力き裂試験は、JIS K6922-2の附属書4.7(定ひずみ環境応力き裂試験)によって行う。
 内容は、ノッチを付けた試料を所定の環境条件(ここではノニル・フェニル・ポリオキシエチレン・エタノール10mass%水溶液中)に保存し、一定の歪を与え、試料にクラックが発生するまでの時間を測定する。
 つまり、この時間の長短で、性能判断をする方法である。
 図1.2は、横軸にゲル分率を、縦軸に環境応力き裂性能をプロットし、環境応力き裂性能のゲル分率依存性を示したものである。
 このデータから、環境応力き裂性能は、ゲル分率が45%付近から飛躍的に向上することがわかる。

環境条件: ノニル・フェニル・ポリオキシエチレン・エタノール 10mass%水溶液
適正温度: 50℃
ノッチ: 0.3mm
 
図1.2 架橋ポリエチレン管の環境応力き裂特性


(3)架橋ポリエチレン管の特性

@優れた温度特性

 樹脂管の使用に際して、まずはじめに懸念されるのは温度の影響であるが、本規格の架橋ポリエチレン管は、常温から95℃までの温度範囲全域にわたり、後項2-1の表2.1に掲げる圧力に対し十分な安全率を見込んだ設計がなされている。
 樹脂管の場合、クリープ等による強度低下について注意が必要であるが、架橋ポリエチレン管は20〜95℃で約10年におよぶ長期のクリープ試験等の結果、建築物の寿命にも匹敵する安定した耐久強度が推定されており、それが他の樹脂管に比べて際立った特徴となっている。管寸法の設定には、このクリープ特性が十分に考慮されているので、常温の水道はもとより水道直結型給湯器の給湯側の配管等にも安心して使用できる管材である。
 また、氷点下での伸びが大きく、耐凍結性も良好である。

A長期使用に耐える物理的化学的安定性

 ポリエチレン管や他の樹脂管同様、架橋ポリエチレン管は水道や給湯の使用条件では腐食や潰食を生じることがなく、長期間安全に使用できる。
 また、コンクリート、通常の土壌、迷走電流等に対しても、ほぼ完璧な耐食性があり、埋設環境に関しては広い適応性がある。
 架橋ポリエチレン管は、その優れた化学的安定性のため、水質保持と食品衛生面でも良好な特性を示し、飲料水用配管材としての要件を備えている。
 実際に、工業会での促進塩素水試験の結果、耐塩素水性に優れていることが確認されており、水道水に対して十分な実用性がある。

B優れた配管作業性と配管更新への適合性

 軽くて可撓性に富んだ管材であるため、長尺のコイルでの取り扱いが容易である。また、端末の接続には確実性が高く、組み付けが容易な継手が用意されているので能率の良い配管作業を行なうことができる。
 可撓性と適度なコシの強さのため、あらかじめ埋設あるいはピット内に配置されたさや管にあとから押し込み通管させる”さや管工法”にも最適である。